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天神町place レポートvol.1 設計コンセプト①建物の形と中庭編

特徴的な形に目を惹かれますが、このフォルムはどのように導き出されたのでしょうか?

◆住まいとしての居心地のよさを追求◆

本敷地は、間口の狭い道路面を除いた周辺すべてを中高層の建物に囲まれており、日照の確保が難しい敷地でした。その環境の中で居心地のよい住戸をつくるためには、居室から明るい風景が見えるようにすることが大切だと考え、いろいろな形状の建物を3Dや模型でつくり、日照のシミュレーションをして、検討を重ねました。

最終的にご提案したのは、四角いボリュームのあいだにスリットを入れる案と、現在のプランの原型である、曲面で中庭を囲む案の2つです。前者は前後にスペースをとることで少しでも明るい場所をつくり、後者は住戸がさまざまな向きになる曲線を用いることで、周囲の建物のすきまと中庭が臨めるようにしました。

 

◆バルコニーから光と風を取り入れる◆

中庭を囲む案に絞られてからは、さらにその曲率の検討を進めました。さまざまなバリエーションを検討しましたが、最終的には施工性も考慮して、2種類の円弧の組み合わせになっています。

建物のボリュームが薄い板を折り曲げたような形状のため、構造的にはそれらを梁でつなぐことが求められました。そこで、イタリアの路地やコロンビアの岩の階段など参考になる空間イメージを集めながら、ブリッジの配置を検討しました。構造的なバランスを調整しつつ、建物内部のインナーバルコニーと外部に張り出すブリッジの2種類のバルコニーをつくることで、建物全体へ光と風を取り入れています。

 

中庭は、どのような空間になるのでしょうか?

◆縦に表情のある、抜けた空間◆

あまり明るくない縦に抜けた空間なので、上からの光を強調するため、コンクリート表面に縦の表情をつけようと考えました。今回、コストを鑑みつつ柔らかい表情とするためにコンクリート型枠に用いたのが、千葉県山武市の木材です。

杉の産地である千葉県山武市には、溝腐れ病という病気にかかった杉が多く、間伐材を含めて建材としては使えない材のストックがあります。NPO法人元気森守隊 さんむ木の駅プロジェクト(外部ページにリンクします)

通常は燃料ペレットとしてしか使われていないこれらの材をスライスして、不揃いな形をそのまま使うことで、材の特徴を表情としてプラスに生かせるだけでなく、より多くの人にこの問題を共有してもらえればと考えました。

 

加工は現地の勝又木材さんにご協力をいただき、試作品をつくりながらの検討を重ねました。最終的には片側を直線、もう片側を木の表情を残すような木板とし、実際にコンクリートを打ってモックアップを制作したうえで、ディテールを決めていきました。

また中庭のランドスケープは、ガーデンデザイナーの長濱香代子さん長濱香代子庭園設計(外部ページにリンクします)に依頼し、光が少ない状態でも育つ植物を選定していただいています。

 

おわりに

事務所の打ち合わせスペースには数えきれないほどのボリューム模型が並んでいて、最適な住環境を創るための検討の軌跡を感じました。ただ奇抜なだけではない、居心地のよい住まいの完成が楽しみです。次回レポートでは、住戸プランについてご紹介します。ご期待ください。