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三組坂flat プロジェクトレポートvol.1

プロジェクトレポート第一弾のテーマは、『設計コンセプト』です。
設計を担当されている伊藤博之建築設計事務所にお伺いし、インタビューをさせて頂きました。

IMG_2336_2〈初期のボリュームスタディ模型から、歴代の模型を並べて迎えてくださった伊藤さんと、担当の上原さん〉

 
そもそも、一般的な集合住宅の設計手法に疑問を持っていたという伊藤さん。
通常、集合住宅のプランニングは、廊下の位置を決めて、各フロアに住戸を割付け、各住戸内の間取りを検討するという手順で進められます。本来、それぞれの住戸の位置によって、環境も景色も異なるはずなのに、画一的にプランが決まってしまう。
三組坂Flatプロジェクトでは、その住戸の環境に応じて、建物の内側からつくっていくという新しい設計にチャレンジしています。
 
三組坂Flatプロジェクトのプランニングは、構造体を検討しつつ、天空率も考慮して、最も効率的に容積を確保するところからスタートしました。将来的な街並みの変化にまで思いを巡らせ、スタディを重ねるうちに、鉄筋コンクリートの柱のよってうまれる“マス目”をつなげて空間をつくっていくという考え方が定まってきたといいます。
概念図

〈平面の概念図〉

 
“マス目”のつなげ方には、たくさんの創意工夫がされています。
柱の真ん中に壁を立てるのではなく、あえて面を揃えることによって、少し横長な空間と、少し縦長な空間ができ、市松模様のような平面が創出されました。さらに、隣り合う“マス目”以外にも空間がつながるように、“三角のマス目”や“円弧”を用い、唯一無二の間取りができあがっていきました。
 
この考え方は、平面だけでなく、断面的にも取り入られています。
円弧上の壁によって、トップライトからの光がやわらかく室内に射し込んだり、床面積以上のひろがりを感じられたり。
断面と模型写真
 
ひとつひとつの部屋を最適解として成立させることは、同時に、建物の輪郭を形作ることでもありました。周囲の街並みとの調和を図りながら、全方位に等しく開き、空間をつなげて部屋をつくっていく。そして、それぞれの部屋に合わせて決められた窓の形が、そのまま外観に現れて建物の表情となるのです。
 
立面図と外観パース
また、それぞれの部屋は、内装も個性豊かに計画されています。柱や梁はコンクリートそのままに、床材はタイルやフローリングなど、バリエーションを持たせています。さらに、床の仕上げに合わせて、造作家具、窓枠や窓サッシの色がコーディネートされており、その窓枠の色が外観にも現れています。
 
三組坂Flatプロジェクトは、建物の内側と外側、平面と断面、それぞれが双方から最適になるようにプランニングされ、一棟の全体性が構築されているのです。
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●伊藤博之氏 プロフィール
1993年 東京大学工学部建築学科卒業
1995年 同大学工学系研究科修士課程修了
1995~1998年 日建設計勤務
1998年 O.F.D.A.共同設立
1999年 伊藤博之建築設計事務所設立
2018年~工学院大学建築学部建築デザイン学科教授
●受賞歴(抜粋)
2008年 グッドデザイン賞(サンブスギの家具)
2008年 ミラノサローネ JAPAN DESIGN SELECTION(サンブスギの家具)
2014年 グッドデザイン賞(Hotel & Residence Roppongi)
2015年 SDレビュー鹿島賞(塔の躯体/辰巳アパートメントハウス)
2016年 東京建築士会 住宅建築賞 (DECKS)
2016年 グッドデザイン賞(DECKS、東新宿テラス、FARE祐天寺)
2017年 東京建築士会 住宅建築賞(辰巳アパートメントハウス)
2017年 AZ Award Residential Architecture Multi Unit最優秀賞 (辰巳アパートメントハ
2017年 AIA(アメリカ建築家協会)Japan Design Award (辰巳アパートメントハウス)
2018年 RIBA(王立英国建築家協会)Awards for International Excellence(辰巳アパートメントハウス)
伊藤博之建築設計事務所 公式サイト